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寄宿舎生活(4)

「悪い行動が報われないように管理し、良い行動を教えて褒める」
これが犬と暮らす際の鉄則。

管理が緩みすぎるとまだルールを知らない若い犬は
人にとって「悪い」行動をする。(犬にとってはしごく真っ当でも)
人はそれを放っておけないので止めたり叱ったりする。

行動は報われれば増えるので、叱るために追いかけっこが始まったり、
おいしいものが得られたり、止められることで飼主の関心が向けば、
問題の行動は酷くなる。

「黙認」は「OK!」という意味だから放っておくのはマズイ。
まあ、行動の始めや最中に叱るのはそれなりに効果もあるだろう。
しかし朝から晩まで叱り続けていては犬も人もまいってしまう。
しかも感情面は悪化するので問題が深刻化することもある。

まずは悪い行動が起こらないように管理して、
して欲しい行動を犬の行動レパートリーに入れて強化する。
これに尽きる。


チャロと夜に家に戻ったら晩御飯。
その前に家に入るためのいくつかのルールがある。
まず、玄関に入る前にお座りして待つ。
「ヨシ」で中に入ってもまだ土間にいないといけない。

複数頭いる場合は呼ばれた犬から上がり框に前足を乗せ足を拭く。
全部の足が拭けたら上がって他の犬の足拭きを待つ。

居間への戸の前でもお座りの後、名前を呼ばれた犬から中へ。
といってもキーパは戸が開くとすぐに入っていく。
最小限の抑制で十分一緒に暮らせるからだ。
不要な抑制は犬とののんびり生活には向かないと思う。

若いうちにしっかりガマン(抑制)を覚え、年齢と共に自由度を増す。
そんな暮らしがいいなと思う。

トイレのための庭への出入りのときも同様のルールがある。
扉の前でお座りして待ち、名前を呼ばれた犬から…がルール。
用が済むと掃出しサッシの前で犬たちが待っていることになる。
チャロは立ち入り禁止の洗濯物干しスペースに入ってしまうので、
リードをつけて一緒に出る。

それから晩御飯。
人の食事の間は伏せの練習なのだが、その後少しお勉強。
ケージの中にいるときは諦めて静かだが、外に出るとエンジン全開!
では困る。
居間で犬とまったり過ごしたい。

分離不安気味でなければ一緒に寝るのも良いのだが、
チャロは依存が高まりそうなので、居間で静かに過ごす練習をする。
この日は「ゴロン」をしてみた。

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大型犬にゴロンを教えておくと、歯石取りや爪切りなどで便利。
ギャラリーの2頭は、たまにもらえるおこぼれを期待している。
(もちろんギャラリーたちの食事は済み。)
そんな中でも静かにしていられるように練習。

まだまだマテが苦手なチャロだが、少しずつ待てるようになってきた。
マテは阻止なので「ヨシでフードがもらえること」の理解が大事。

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お正月を迎える前に記念撮影。
(左から、わが家のキーパ、鈴短のすず、少年院の幸、チャロ)

居間で僕と一緒に横になって寝る練習をしたいのだが、
お正月にとっておこうと思う。

年明けにチャロは去勢をする予定だ。
正月休み中なら術後の様子をみれるので、獣医さんと飼主さんに
相談して決めた。


ざっとチャロとの1日を通してわが家のルールと生活をみてみた。
もちろん犬との細かい意思のやり取りはもっとあるのだが、
これからもしばらくわが家にいることになると思うので、
また、経過をご報告できると思う。





寄宿舎生活(3)

若い犬に限らず人間でも社会で暮らすには抑制が必要だ。
僕が他人の家でお腹がすいたからと勝手に冷蔵庫を開けることはない。
集団での生活には抑制が欠かせない。
決まった環境ではそれがルールとなる。

わが家の食事時のルールは、犬は伏せていること。
場所は犬が気に入ったところならどこでもよいので静かに伏せている。
犬育てクラスを終了した後でも、日々犬と遊ぶ時間を確保することと、
食事時の習慣さえ維持していれば「おりこう度」は崩れにくいと思う。


チャロは朝の散歩から帰りケージで少し休憩したら食事だ。
といっても僕が食事をする間、足元で伏せている練習なのだけれど。
最初は「フセ」と言ってフードを床のマットに置く。
ルールがわかったら自ら伏せるのを待ってフード。
さらに伏せていたら、たまにフード、というステップで。

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毎日のことなので上達は早く、途中何度か立つものの
ほとんどの時間伏せていられるようになってきた。
幸やすずがわが家に来て、一緒に足元で伏せている影響もあるのかも。

朝からこの段階まででざっと2時間ちょっと経過。これが朝の日課。
食後は再度トイレに出すが、そこからは日によってメニューが変わる。

その日のクラスに一緒に遊べる犬たちがいる場合や、
鈴鹿短大に行く日、動物病院で診察のある日などは一緒に連れて行く。
今のところ2,3日に1回は家で留守番という感じ。

クラス中は車のクレートで留守番し、終わると待ってました!と遊ぶ。

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この日は以前に登場した「はいす」のクラス。

短大での授業中は、犬舎にある僕の部屋のケージで留守番。
すずは授業に出席するのでひとりで待つ。

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家でもそうなのだが、誰かが視界から消える時の不安が大きく、
離れようとすると吠える。
しばらくすると吠えやむのだが、徐々に治していかなくては。

短大には何頭かの犬たちがやってくる。
下の写真は学校犬のすずと学生の犬の「はるあき」。

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授業が終わると短大内のドッグランで授業参加犬たちと遊ぶ。

伊勢の獣医さんに行った時はクラスとの合間に河川敷の公園を散歩。
初めてロングリードで散歩してみた。
何度か木に引っ掛かったが、戻るのを待っていると徐々に木やベンチの
僕側を通るようになり、後半はほとんど引っ掛からなくなった。

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散歩では初めてのものや怖いものにも慣らしていくことも必要。

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散歩中何度か、呼ぶと来ることと、僕についてくることを教える。
チャロは初めての場所は少し不安なので、僕がズンズン歩いていくと、
匂いを嗅いでいてもある程度離れるとついてくる。
(実はほとんどの犬がそうなる。面白いのでまたの機会に詳しく。)

帰りの車の中ではクレートで静かにしている。
クレートも最初は落ち着かなかったようだが、
楽しい場所に行くには車のクレートに乗らなくてはいけない
とわかったようで、嫌がらずに乗り、中では静かにしている。

車のクレートには、今のところ飛び乗れないようで、
前足だけ車の荷台にかけるので抱っこで乗せる。
でも、どうしても乗りたければ自分から乗ると思うので、
近いうちに集中レッスンでクレートの価値を上げてみようと思う。

出るときは、扉が開いても飛び出さず、「ヨシ」の合図で外に出る。
勝手に出ようとしたら扉を閉めるだけで良いので簡単。
出たければ待つようになる。
チャロはそれ程でもないのだが、出たくて犬が興奮している場合は、
面倒だが落ち着くまで放っておく。
静かにならないと出れないとわかれば、自己抑制がついてくる。

帰宅後は晩御飯が待っている!

寄宿舎生活(2)

散歩では自由に匂いを嗅がせるべきだとか、
飼主の横をついて歩かせないといけないとか、
匂いを嗅ぎだしたら引っ張る、あるいは待ってあげる、
前に出るとUターンしたり、立ち止まるなどなど、
世の中には散歩にまつわるアドバイスが山ほどある。

大事なことは、
匂いを嗅ぐ探索は犬にとってとても楽しいことで(多分)、
ストレス解消には欠かせないということ。
散歩ではゆっくりたっぷり匂いを嗅がせてあげたい。

しかし、除草剤や車、通行人、他犬とのすれ違いなど、
自由に匂いを嗅げないこともある。
急いでいる時には匂い嗅ぎもそこそこになることもあるだろう。

要は人と犬が一緒に歩くのには、いろいろなパターンがあり、
犬にもそのことをわかってもらえばよい。
飼主が散歩で必要だと思うパターンを犬に伝えることが必要。

僕の場合は、匂いを嗅がずに一緒に歩くことと、自由に歩くこと。
この二つがあれば十分だろうか。
一緒に歩くのは横を歩いてくれるとありがたい。

以前Choose to heelでとても有名だったDawn・Jecsの
デモをアメリカで見せていただいた。(もう10年近く前だろうか?)
彼女は顔を見ながらヒールにつけて歩くことと、
ヒールより少し前のポジションで飼主を気にしながら歩くことを
分けて教えていた。

それ以来、僕のクラスでもこの「顔は見続けないけれど横を歩く」
ことを取り入れて、合図をつけて教えている。
当時とは教え方がだいぶ異なっているけれど…。

また、匂い嗅ぎができる、できないにかかわらず
リードを引っ張りながらでは人も困るし、犬にも負担がかかる。
どちらにしてもリードを引っ張られずに歩けるとありがたい。

チャロとの散歩では、道路に出る前にオスワリした後は
敷地内の道端でスッキリし、5mのリードの範囲で自由に匂い嗅ぎ。
リードが張りそうになると指でリードを軽く引く。
(ソフトリードと呼んでいる)
それがオイデの合図だとあらかじめ犬に教えておく。

勢いよくリードが張りそうな時は、ポンピングブレーキのように
リードをソフトに握っては緩めてを繰り返し、徐々に勢いを止める。
ただし、リードが張ったまま地面や電柱、草の匂いを嗅がせないこと。

引っ張る犬のご褒美の多くは匂い嗅ぎと行きたいところへ行けること。
これが好子となり行動が強化される。
悪い行動が報われないように。

ちなみにチャロは首輪での引っ張りは強化されているが、
イージーウォークでは強く引っ張らない。
なのでイージーウォークを着けての散歩だ。
近いうちにハーネス(胴輪)も試してみよう。

河川敷でゆっくり匂い嗅ぎの時間をとるため
道中は匂いを嗅がずに横をついて歩く。
好子は歩いている最中と止まった時に口に放り込む小さなビスケット。
こちらを気にした瞬間や横でおりこうに歩いている時に褒めながら…。

といってもチャロは少し怖がりなのでまだ薄暗い時間だと
不安からか僕から離れない。河川敷についても尻尾は下がり気味。
(写真は初めて河川敷に行った朝のもの。この時は首輪だった。)

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ところが年末にいつも帰ってくる少年院の犬「幸」や
鈴鹿短大の「すず」が一緒になると俄然、自信がつくのか
尻尾は上がるようになった。
僕とでは不安でも仲間の犬が一緒なら心強いようだ。
まあ、単純に馴れたのかもしれないが…。

匂い嗅ぎ中に、枝を咥えて持ってくるので「チョウダイ」を伝える。
変なものを咥えそうな時は「ヤメテ!」と言ってからリードで
とめると何度目からか言葉だけで諦めるようになった。
そんな時はよーく褒めて美味しいビスケットをあげる。

途中でドッグフードをご褒美にお勉強。
マテ、オイデ、HPなどなどを遊びながら。 

階段が数ヵ所あるので一段目と最後の段は人の横で止まること、
途中も人の横か後ろを歩くこと、を練習する。
前にも書いたが、当初は階段を怖がった?のでおいしいオヤツを使う。

帰り道に車が多いところが一部あり、そこでは僕の右側を一緒に歩く。
(通常は左側を教えることが多いが、両方教えておくと便利)
その道路では匂いは一切嗅がせないことにする。

一度帰宅後、シェパードのおばあちゃん犬「キーパ」と一緒に
再度短い散歩に行く。

5mのリードの両端にチャロとキーパをつないで歩く。
お互いが引っ張らないようにリードで調整する。
キーパは老犬なので匂い嗅ぎにとても時間がかかる。
若いチャロは待つことを余儀なくされる。

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若い犬にはとても良い散歩。老犬の速度に合わせてゆっくり進む。
帰宅すると階段を数段横について上り、「オスワリ・ヨシ」で玄関に。
立った状態で待つ「しずかに」で足拭き。
これにはまだフードが必要。

最初の河川敷の散歩で約1時間、キーパとは20~30分。
それでも帰ってきて横になることはない。元気。
少し休憩して食事だ!(と言っても散歩で残ったフードだが…)

寄宿舎生活(1)

行動は直後に好子が得られると増える。
好子は食べ物でも、おもちゃでも、行動でも、社会的接触でも
その時に犬が喜ぶことなら何でもよい。
(好子が必ずしも「好きなもの」とは限らない。杉山尚子氏の『行動分析学入門』(集英社新書)には「ゴキブリホイホイを覗く」という行動の好子は「ゴキブリ」!という例が紹介されている。)
スモールステップで試行錯誤と成功を繰り返し「ルール」を覚える。

「ルール」は人と犬の双方が快適に暮らしていくために、
犬が行動レパートリーの中からその時の環境に最適な行動を
選択することが理想。最初は手助けに飼主が合図を出すのも良い。

先日から若い犬を預かることになった。
生後7か月のワイマラナーの男の子。
遊び好きの甘えん坊で、やんちゃだけれど少し怖がりで
人への依存度が高い。犬育て教室は入門クラスを終了したところ。
しばらくわが家で生活を共にする。

2012_12奥チャロ

わが家にはいくつかのルールがある。結構細かい。
わが家の犬には当たり前のルールだが、若い犬にとっては
いきなり寄宿舎へ入れられたようなものだと思う。
どんなルールがあるのか、チャロの一日を追って順にみていく。

朝6時過ぎに2階の僕が目覚ましで起きると、
1階居間の大型のケージでキュンキュン始まり、やがてワンワンへ。
やめさせるには、吠えている間は関心を向けないか(消去)、
霧吹きで水をかける(正の弱化)。弱化の場合は毎回かける必要がある。

忍耐は必要だが、簡単なので静かになるまで1階に降りないことにする。
ただし消去バースト(一時的に行動が激しくなる)があるので注意。
5日目くらいから吠えなくなってきた。
この場合の好子は僕の存在と関心。散歩への期待感も要因のひとつ。

ケージの中で座るのを待ち、座ったら扉を開けてリードをつける。
この過程で立ち上がれば再度扉を閉める。
アイコンタクトできたら「ヨシ」でケージの外へ。
できるようになったので、4日目からは「フセ」にルール変更。
好子はケージから出ることと僕との接触。

出た時に何かをくわえようとするのでリードでとめて再度「オスワリ」。
(「悪い行動は管理して、良い行動を褒める」という鉄則。)
この時、立ち入り禁止のキッチンにも入ろうとするのでリードでとめる。
入ろうとするのをやめたらすかさず言葉で褒める。
リードが弛んだ状態で、居間から玄関に出る戸まで移動。
(といっても数歩!だが、少しでも引っ張りを強化しないこと。)
5日目からは、リードなしでケージから玄関へ。

戸の前でオスワリし、僕が出てから「ヨシ」で玄関へ。
玄関では興奮してドタバタし、大騒ぎなので「オスワリ」をさせる。
5日目くらいには僕が玄関の戸を開けて外に出るまで待てるようになる。
好子はもちろん外に出ること。ここまでフードは不要。

玄関から前の道路までは階段を数段降りて駐車スペースを横切る。
階段を一挙に飛び降りようとするので、1段ずつ降りるようにする。
少し階段が怖いようなので、1段ごとにフードを使う。
駐車スペースで座るのを待ち「ヨシ」で道路へ。
好子は道端の匂い嗅ぎとオシッコ&ウンチ。
大量のオシッコとウンチをしてスッキリ!

いざ散歩へ!

管理

前々回「ダメなものはダメ」で考えたように
「管理」は大きく分けて二つあると思う。
「物理的な管理」と「心理的な管理」だ。
「物理的な管理」はさらにふたつに分かれる。
ひとつは「資源」の管理でもうひとつは「環境」を管理すること。

「心理的な管理」はお互いがルールを守ることで
「悪い行動が報われない」ようにする。

「物理的な管理」は、リードやサークル、クレートや目隠しなど
物によって上記と同じ機能を果たすのだが、異なる役割もある。

「物理的管理」の「資源の管理」から考えてみる。
これは「悪い行動が報われない」ように行う「管理」とは異なり、
「資源のご褒美化」のための管理だ。
言い換えれば確立操作としての管理である。

犬が生きていく上で欠かせないものやことを「資源」と呼ぶ。
管理されている資源は「ご褒美」となり得る。(資源のご褒美化)
なり得ると書いたのは、いくら人が管理していても
犬に要求されて与えるものは「ご褒美」とは言わないため。

犬の基本的な「資源」は自由に得られるようにすべきだと思う。
ただ、飼主の意思を尊重する「意味」を犬が持つためには
飼主と犬の「絆」と資源の管理(ご褒美化)が必要になる。
(絆についてはまたの機会に考えたい。)

「資源」を「管理」し、ご褒美化する場合、
資源の種類が多ければ多いほど飼主の魅力は増す。
食べ物のご褒美だけを使っている人の魅力=食べ物となってしまう。
それ以外のご褒美をたくさん持っておきたい。

次に「環境の管理」について考える。
環境の管理はさらに2つのパターンがある。
ひとつめは、悪い行動が報われないための管理。
ふたつめは、学習の際、成功率を調整するために行う管理。

ひとつめの管理を考えてみる。
繰り返すが、犬にルールを伝えるために必要なのは
「良い行動に関心を向け、悪い行動は報われないよう管理する」こと。
このときの管理が「環境の管理」。

もちろん良い悪いは人にとっての基準で犬にとってはただの行動。
こうして共通のルールを犬と築いていく。

ふたつめは学習の際の環境の管理について。
犬にこちらの意図することを考えてもらう場合、
簡単に犬が諦めないためには、まず、小さな成功が必要になる。

その際、成功率は50%を超えている必要がある。
そうすることでモチベーションを下げずに次の成功へと導ける。
(もちろん違う方法もありますが…。それは後日にまた。)
成功率を維持するためのものが学習の際の管理。

このように良い行動は頑張れば報われると教え、
悪い行動は強化が起こらないように徹底して管理する。
これを繰り返し、おりこうになれば(心理的管理=抑制がつけば)
物理的管理は減らせる。

こう考えると「管理」といってもいろんな意味合いがあるなと思う。

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